ガバナンス構築と推進力:AI活用推進基盤を1.5ヶ月で確立
2025/11/29
事例テーマ
ボット乱立を防ぎ、品質を担保する「民主化」のためのガバナンス基盤
プロジェクト概要
クライアント: 大手金融/サービス企業(クライアントA社:売上規模 6,000億円)
役割: プロジェクトマネージャー (PM) / GenAIガバナンスアドバイザー
(※本事例は、AI Nexus代表者が過去に参画したプロジェクトにおける個人の実績です)
背景と初期課題
クライアントA社では、Allganize社のAIチャットボットツール「Alli」の導入自体は完了していました。 しかし、現場の業務担当者が自由にボットを作成できる環境(ボット作成テンプレート)を公開しようとしたところ、以下の懸念からプロジェクトが停滞していました。
- ボットの乱立(Sprawl): 管理不能なボットが大量に作成される恐れ。
- 品質のバラつき: 精度の低いボットが公開され、業務に支障が出る懸念。
- 運用ルールの欠如: アカウント発行、問い合わせ対応、メンテナンスの責任分界点が不明確。
構築対象の定義:ボット作成テンプレートと事務局運用
本プロジェクトのゴールは、単なるツールの開放ではなく、「業務担当者が、特定の業務に特化したチャットボットを『正しく』作れる環境」の提供です。 そのために、誰でも一定の品質でボットを作れる「テンプレート」と、それを管理する「事務局(管理者)」の運用プロセスをセットで構築しました。
推進戦略:ルールとドキュメントの整備
停滞を打破するため、ツール設定よりも「運用設計」と「ドキュメント整備」にリソースを集中させました。
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開発計画書の導入: ボット作成を希望する担当者に対し、「開発計画書」の提出を義務付けました。利用目的、参照データ、期待する効果を事前に宣言させることで、無駄なボット作成を抑制しました。
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事務局(管理者)による審査プロセス: 提出された計画書を事務局がレビューするフローを確立。事務局はボットの中身を直接修正するのではなく、計画書に基づき「管理されていること」を承認・証明する役割に徹しました。
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マニュアルとサポート体制の整備: 操作マニュアルだけでなく、アカウント発行フローや問い合わせ対応ルールを整備。文書作成に約1ヶ月を費やし、徹底した準備を行いました。
成果:1.5ヶ月でのリリースとガバナンス確立
着手から約1.5ヶ月(文書作成に約1ヶ月)で、リスクをコントロール可能な状態でリリースを完了しました。
- 開発計画書による品質担保: 「何のためのボットか」が明確化され、精度の低いボットや重複したボットの作成を未然に防ぐ仕組みが定着しました。
- 事務局運用の確立: 事務局が過度に工数をかけず、かつガバナンスを効かせられる「審査・承認」のプロセスが回り始めました。
- 現場主導のDX推進: 明確なルール(交通法規)が敷かれたことで、業務担当者が安心してボット作成(運転)に取り組める土壌が整いました。
まとめ
本事例は、高性能なツール(Alli)があるだけではDXは進まないことを示しています。 「開発計画書」というガバナンスの要と、それを運用する「事務局プロセス」を定義し、ドキュメントとして落とし込むことで、初めてツールは「業務インフラ」として機能し始めました。