【DX戦略】年間1,400時間工数削減を保証する「横軸思考」戦略立案

2025/11/29

事例テーマ

BPO内製化におけるプロセス効率化戦略の立案と推進

Horizontal Thinking vs Vertical Thinking

プロジェクト概要

クライアント: IT系SaaS企業(クライアントB社 / マーケティング関連事業部、売上規模300億円)
役割: 提案リード(現状分析、課題定義、プロトタイピング)、プロジェクト推進(PM)
(※本事例は、AI Nexus代表者が過去に参画したプロジェクトにおける個人の実績です)

背景と初期課題

クライアントB社では、これまでBPOへ外注していたマーケティング定型業務を内製化するプロジェクトが進行していました。 単に業務を引き継ぐのではなく、既存プロセスを抜本的に見直し、効率化したいという強い要望がありました。

しかし、プロジェクト開始直後の初期提案では、「個別のプロセスをどう改善するか(縦軸思考)」に終始してしまい、試算された削減効果は年間約684時間にとどまりました。 クライアントからは「ビジネスインパクトが小さい」という厳しい指摘を受け、プロジェクトは停滞の危機に直面しました。

構築対象の定義

マーケティング業務の中核であり、最も工数を要していた「リスト整形(Data Formatting)」と「リストインポート(Data Import Automation)」の完全自動化を目指しました。


推進戦略:停滞を打破した「横軸思考」への転換

初期提案の失敗からわずか1週間で、問題の本質を再定義し、戦略を大きく転換しました。

Strategy Shift Timeline

  1. 横軸思考による再定義: 個々の業務フロー(縦軸)を改善するのではなく、複数の業務フローに共通して存在する「リスト整形」や「データ加工」といったタスク(横軸)に着目しました。これらを一括して自動化する基盤を作ることで、効果が最大化すると仮説を立てました。

  2. 「部分最適の総和 < 全体最適」のロジック: 「個別の業務をちまちま直すよりも、共通基盤を作った方が圧倒的に早い」というロジック(部分最適の総和 < 共通タスク自動化による全体最適)を構築。これにより、議論を「作業改善」から「業務フロー全体のリデザイン」へと昇華させました。

  3. ステークホルダー連携: 導入予定のiPaaSツール(Anyflow)の利用許可が難航していましたが、情報システム部門と連携し、セキュリティ資料を作成して利用許可取得の目処を付け、技術的なブロッカーを排除しました。


成果 I:堅牢性の証明(運用・ガバナンス)

構築の目的を、単なる自動化ではなく、「タスクを忘れられる状態(完全自動化)」の実現に設定しました。

  • 論理的な「No」によるROI死守: 現場スタッフから、全体最適の方針に逆行する(ROIを下げる)個別要望が出た際、自動化効果の減少を理由に論理的に「No」と回答。「何をやらないか」という健全な境界線を設定し、プロジェクトの本質的価値を守り抜きました。
  • データ品質の堅牢性: 複雑なCSV構造への対応やデータ統合処理ロジックを実装。2,000件規模のテストデータを用いてハルシネーション(データズレ)が発生していないことを検証し、業務に耐えうる品質を保証しました。

成果 II:インパクトの証明(ROIと転換)

戦略転換の結果、当初の倍以上となる成果を提示することに成功しました。

ROI Impact

  • 定量的なインパクト: 「横軸思考」に基づく再試算の結果、年間約1,400時間の工数削減インパクトを提示。この圧倒的なROIが決め手となり、準委任契約での正式なプロジェクト推進が決定しました。
  • 原則の証明: この成功により、クライアントの納得と信頼は「信頼関係 × 論理的正しさ(ROI) × 組織内力学の理解」の掛け合わせで達成されるという原則を証明しました。

まとめ:PM/アドバイザーとしての専門性

本事例は、「事業視点」(横軸思考、ROI最大化)と「PM力」(戦略転換、論理的な合意形成)、そして「技術力」(Anyflow/Azure OpenAI連携)を高度に組み合わせることで、停滞しかけたプロジェクトをV字回復させた実績です。

AI Nexusの役割

この実績は、目の前の渋滞(個別タスクの煩雑さ)を解消するために信号機を調整するのではなく、「渋滞を引き起こしている都市構造そのもの(横軸)を再設計することで、交通の流れを劇的に改善した「都市計画」のような事例と言えます。